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認知症の介護のポイントを教えてください! 負担を軽くする方法や要介護認定の流れなど

家族が認知症と診断され、これから介護が始まります。認知症に限ったことではありませんが、介護はかなり大変だというイメージが大きいです。そのため、介護の負担を少しでも軽くする方法や要介護認定を受けるまでの流れについて教えてもらいたいです。

A認知症の介護は無理をせず、周りを頼ることが大切です。

家族の介護は家族がしなければいけないと思っている人も少なくありませんが、家族が全てを負担するのはとても大変なことです。今までできていたことができなくなっていく家族を見て、不安やいら立ちも感じてしまうでしょう。しかしそれは認知症の症状なので、正しく理解していれば、適切な対応ができます。
また、介護の専門知識を持つ人に頼ってみることも家族の負担軽減につながります。要介護認定を受け、介護サービスを利用するのも負担軽減には有効な手段です。

平栗 潤一
平栗 潤一
一般社団法人 日本介護協会 理事長

家族が認知症になってしまい、介護が必要になった場合、どうすれば良いのか戸惑ってしまう人も少なくありません。介護が必要になる前から準備できることが理想的ですが、できていない家庭がほとんどでしょう。そこで今回は、家族が認知症になってしまった場合にどのような流れで介護をするのか、認知症を理解するためのポイントにはどのようなものがあるのかといった疑問に答えていきます。

認知症の介護をするまでの流れ

認知症の介護は、最初はそこまで大きな問題がなかったとしても、徐々にトラブルが増えていき、在宅介護が難しくなっていきます。そのため、さまざまなサポートを受ける必要があります。では、どのような流れで認知症の介護をするのか見ていきましょう。

地域包括支援センターを訪れる

家族が認知症になったらまずは、地域包括支援センターに足を運びましょう。地域包括支援センターは、介護に関する基本的な情報を提供してくれる場所です。市町村の役所に設置されているだけではなく、独立して設置されているケースもあります。

地域包括支援センターの運営は市町村が主体となっていて、保健師や社会福祉士、主任介護支援専門員などが在籍しています。各地域のケアマネジャーの紹介業務などをしているので、介護が必要になったら真っ先に相談すべき場所だと言えるでしょう。

要介護認定を受ける

地域包括支援センターに相談し、ケアマネジャーを紹介してもらったら要介護認定を受けます。要介護認定は、介護サービスを利用する際に必ず受けなければいけません。

要介護認定は、介護が必要だと判断される度合いを8つの段階に分類したものです。一番軽いのは自立となり、そこから要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5という順で介護の必要性が高くなっていきます。要介護度が高ければ高いほど利用できる施設が増え、介護保険サービスを利用する際に必要となる点数も増えていく制度です。

ケアマネジャーとケアプランを作る

要介護認定を済ませたら、ケアマネジャーとケアプランを作っていきます。ケアマネジャーは介護支援専門員とも呼ばれていて、介護や医療、福祉に関する知識を持っているプロフェッショナルです。

ケアマネジャーは、家族と話し合ってケアプランを作成します。ケアプランは介護サービスを利用する際に必要なもので、利用者が適切な介護を受けられるようにさまざまな情報をまとめたものです。利用者と面談するアセスメントを通じて本人の要望などを聞き出し、一人ひとりにあったケアプランを作成します。

在宅介護もしくは施設介護に取り組む

在宅介護か施設介護のどちらを選択するかも重要なポイントになります。要介護度や症状によって、どちらが適しているかは変わってくるため、一人ひとりの状態に合わせて決める必要があります。

在宅介護の場合は、ホームヘルプサービスやデイサービスをメインで利用するケースが多いです。ホームヘルプサービスには、訪問介護や訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護といったものがあります。

デイサービスは在宅介護をしている家族の負担を減らせる施設です。通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーション(デイケア)、地域密着型通所介護(小規模デイサービス)、療養通所介護(医療型デイサービス)、認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)といった施設も利用されています。

施設介護は在宅介護が難しい場合に利用されます。短期入所生活介護(一般型ショートステイ)や短期入所療養介護(医療型ショートステイ)といった宿泊サービスも施設介護に含まれるでしょう。その他には、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院といった施設が利用されています。

要介護認定による変化

要介護認定を受けると、受け取れる給付金や利用できるサービスに変化が生じます。続いては、どのような変化が生じるのか見ていきましょう。

介護保険の使える額が変わる

介護保険を利用できる金額は、認定された要支援度・要介護度によって変わってきます。では、要介護度に応じてどのくらいの給付金を受け取れるのでしょうか?

介護度 給付額(上限)
自立 給付なし
要支援1 月額5万320円
要支援2 月額10万5,310円
要介護1 月額16万7,650円
要介護2 月額19万7,050円
要介護3 月額27万480円
要介護4 月額30万9,380円
要介護5 月額36万2,170円

要介護度が高くなるほど、必要となる介護サービスも増えるので給付金もその分大きくなります。そのため、高額な介護サービスも負担を減らし、安心して利用できるようになっています。

参考:厚生労働省「サービスにかかる利用料

使える介護サービスや入居可能な施設が変わる

使える介護サービスや入居できる施設は、要介護度によって変わってきます。続いては、要介護度別に利用できるサービスや施設はどうなっているのか見ていきましょう。

介護度 利用できるサービスの種類
要支援1 訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリテーション、デイサービス、デイケア、地域密着型、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、短期入所生活介護、短期入所療養介護、地域密着型特定施設入居者施設介護、特定福祉用具の販売、住宅改修費の支給
要支援2 要支援1で利用可能なサービスに認知症対応型共同生活介護が追加
要介護1~要介護2 要支援で利用できるサービスに、夜間対応型訪問看護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護が追加
要介護3~要介護5 要介護1~要介護2で利用できるサービスに、特別養護老人ホームが追加

福祉用具のなかには、要介護度によって貸与できないものがあります。どのような福祉用具を借りられるかは、福祉用具貸与サービスを提供している事業所やケアマネジャーに確認しましょう。

認知症を理解するための9大原則

ここからは認知症の人を介護する際のポイントについてご紹介します。

まず、認知症に対して理解を深めていくためには、9大原則を知っておく必要があります。その内容についても確認しておきましょう。

第1法則 : 記憶障害に関する法則

同じことを繰り返すのは、ついさっきしたことを忘れてしまうからです。食事をしたことも忘れてしまいます。また、過去にさかのぼっていくため、昔の話をたくさんするようになります。

第2法則 : 症状の出現強度に関する法則

認知症の症状は、身近な人に対してより強く現れる傾向があります。同居していて主介護者となっている嫁が財布を取ったといったような妄想をするのはそのためです。

第3法則 : 自己有利の法則

認知症になると、自分にとって不利なことは認めないようになります。忘れたことについて聞くと怒りだすことが多いのは、自己有利が強くなっているからです。

第4法則 : まだら症状の法則

認知症になっても正常な部分が残っているため、周りも一瞬治ったのではないかと混乱してしまうことがあるでしょう。症状は常に一定ではなく、周囲の状況などによって強まったり、弱まったりすることも理解しておくことが大切です。

第5法則 : 感情残像の法則

自分自身が話したり、行動したりしたことはすぐに忘れてしまいますが、感情は残されています。褒めることや感謝すること、相槌を打つこと、共感すること、事実でなくても認めることによって、介護してくれる人に対して良い印象を抱き、介護拒否を回避しやすくなります。

第6法則 : こだわりの法則

特定の物事にこだわり続けることも多くなります。そのような時には、本人が安心できるようにそのままにしておいたり、ずっと続くことではないと割り切ったりする必要があります。また、地域の協力や理解を得たり、認知症になった人の過去に寄り添ったりすると状況改善へと導きやすくなるでしょう。

第7法則 : 作用・反作用の法則

認知症の方は、こちらから無理に指示を出すと「作用・反作用の法則」が働き、反発するように真逆の行動をとることが多いです。認知症の方の介護は、思うようにいかずイライラし、感情的になってしまう場面は多いでしょう。しかし、感情むき出しの対応は逆に言うことを聞いてくれなくなるため、作用・反作用を意識して落ち着いて対処していくことが大事です。

第8法則 :認知症症状の了解可能性に関する法則

認知症の人が発する言動は、脈絡が無いように感じられるため、困ってしまうこともしばしばあります。そんな時は、相手の気持ちを考えてみることが大事です。言葉の一つひとつを聞き取り、言葉の意味や気持ちを相手の立場になって考えることで、認知症の方が伝えたいことが理解できるようになるでしょう。

第9法則 :衰弱の進行に関する法則

認知症になると、老化のスピードは未発症の方と比べると3倍も早いといわれています。認知症になったばかりの頃は元気でも、その状態が最後まで続くとは限らないということです。

認知症の介護をするうえで心がける「3つの"ない"」

認知症の症状を軽減するためには、3つの「ない」についても知っておくと良いでしょう。

驚かせない

認知症になると、自分自身がどのような状況に置かれているか理解するまでに時間がかかるので、驚かせないようにしましょう。

急がせない

次にどうしたらいいかもすぐに判断ができなくなっていくので、急がせないことも大切です。

自尊心を傷つけない

認めてもらえないと自信を失って、怒りや悲しみといった感情が強くなります。それが介護拒否につながる可能性もゼロではありません。

それでも認知症の介護はストレスがかかる

認知症の介護にはストレスが付き物です。続いては、介護者が直面する感情にはどのようなものがあるか見ていきましょう。

介護担当者が進んでしまう可能性が高い「4つのステップ」とは

認知症の家族を介護している人は、終わりが見えないことに辛さを感じます。手探り状態では不安になってしまうものです。ここでは、そのような状況に陥った家族が感じる心理ステップについてご紹介します。

第1段階 戸惑い・否定

家族が認知症を発症すると、まずは変化していく姿に戸惑います。認知症であることは理解できていても、「こんなことになるはずがない」と認知症自体を否定したり、「このくらいの症状ならすぐに治る」と症状を否定したりしてしまうケースもあります。なかには、認知症に関する情報を収集し、努力をするケースも見られる時期です。

第2段階 混乱・怒り・拒絶

認知症の症状はその時によって違ったり、どんどん変化したりします。そのような状況になると、介護している側は混乱してしまうものです。きちんと介護をしているつもりでも症状はどんどん進行してしまうので、怒りを覚え、怒鳴ったり、暴力を振るったりするケースも少なくありません。

そして、「どうして私がこんな仕打ちを受けなければいけないのか」と感じるようになり、周りから差し伸べられた手も拒絶するようになります。一方で、「自分が嫌な思いをすれば全てが収まる」と思って淡々と介護をしているようにみえる人もいるので注意する必要があります。

認知症の症状がどのように変化していくか、どのような対応をするのが良いのかといったヒントをくれる人、状況にあった介護サービス、介護家族会などで社会とのつながりを持てるようになると、状況は好転しやすくなるでしょう。本人とも向き合えるようになり、次のステップに進んでいきます。

第3段階 割り切り・諦め

負担を感じながらも認知症に対してネガティブな感情を感じにくくなって、割り切れるようになっていきます。認知症は進行していく病気で、予防や完治ができないことに対して諦めを感じ、どうすればうまく付き合えるか考えるようになっていくステップです。そして、認知症になった家族と一緒に暮らしていくことを受け止める時期でもあります。

第4段階 受容

認知症になった家族や介護をしている自分、そして認知症という病気自体を受け入れ、価値を認められる段階になると最終ステップです。認知症は誰もがなる可能性を持っているため、それも踏まえて全てを受容します。

介護担当者も健康でいるために気をつけること

認知症の介護は、心身ともに大きな負担を感じてしまうものです。しかし、いくつかのポイントに気を付けていれば、健康を保ちながら無理のない介護ができます。最後に、介護する側が健康であり続けるために気を付けたいポイントを見ていきましょう。

周りと協力する

介護をするなかで、つい自分だけで抱え込んでしまうことは少なくありません。認知症の介護は長期に渡るケースも多いため、周りと協力することが大切になります。デイサービスやショートステイなどを使いながら、無理のない範囲で介護をするのが理想的なかたちです。

無理をせず弱音を吐く

親の介護をするのは恩返しであり、やりがいを感じられるものだと思っている人はなかなか弱音を吐くことができません。しかし介護をしているなかで、辛いことや嫌なことは必ずあるので、不満や弱音をたまには吐き出さないとストレスに押しつぶされてしまいます。そうなることを防ぐためにも、介護家族会に参加するなど外部との交流を持つことが大切です。

介護サービスを適宜利用する

在宅介護には限界があります。1人で抱えてしまうとそれだけで大きな負担になり、介護する側が倒れてしまう可能性も高いです。家族との良好な関係を継続するためにも、介護サービスの利用することも視野に入れると良いでしょう。

施設入居を考えるタイミング

家族が認知症と診断された、または現に在宅介護をしている場合、施設入居を検討する人もいるでしょう。

では、具体的にどのような状態になったとき施設への入居を考えた方がいいのでしょうか。

認知症が発覚したとき

本人に判断能力が残っているうちに、施設への入居を検討しておくのも一つの手です。比較的元気なうちであれば、一緒に施設に見学へ行ったり、どんな施設に入りたいかという好みを聞いたりしておけます。

急きょ施設入居が必要になったときに慌てて老人ホームを探した結果、不本意な住まいに入ってしまうのは本人と介護担当者の両方にとってよくありません。特に入居を希望していないという人も、時間的・精神的に余裕があるうちに施設探しの準備をしておきましょう。

常に見守りが必要になったとき

認知症の人の見守りが常に必要になったときは、施設入居を検討しましょう。認知症は進行すると判断能力が低下するため、介護担当者にとって思わぬ行動に出る場合があります。

例えば「車道に飛び出してしまう」「お店の売り物を盗んでしまう」「介護担当者が目を離したすきに外出し、行方不明になってしまう」といった行動が挙げられます。

認知症の人を24時間見守り続けるのは介護担当者にとって大変なことです。また、認知症の人にとっても予期せぬ事故や事件に巻き込まれてしまうリスクがあります。常に見守りが必要な状態になったときは、施設職員が常時見守りをしてくれる老人ホームへの入居を視野に入れるのもいいでしょう。

介護ストレスが大きくなってきたとき

認知症の症状が進むにつれ、介護する側の負担も大きくなります。介護担当者のなかには「本人のため」と思って無理をするあまり、介護ストレスや介護疲れを溜めてしまう人が少なくありません。そうなると体力面、精神面ともに疲弊してしまいます。

介護で腰や膝を痛めたり、認知症の人に思わずきつい言葉をかけてしまったりという問題が起きては、双方にとってよくありません。また介護担当者が精神的に追い込まれてしまうことで、虐待やネグレクトにつながってしまう恐れがあります。

在宅介護に限界を感じる前に施設入居を検討し、介護のプロに家族のケアを任せることはお互いの幸せにつながります。

認知症の介護は関わる人全員が明るくいられるような状況を意識する

認知症の介護は、長く続くことを想定して考えていかなければいけません。同じことを何度も言われたり、物盗られ妄想で犯人扱いされたりすることもあるため、ストレスはかなり溜まってしまうでしょう。大きなストレスをため込み過ぎないためにも、介護サービスを利用も積極的に考えていくことをおすすめします。

家族が認知症になってしまった事実は、始めのうちはなかなか受け入れられないかもしれません。そんな時こそ家族全員で向き合い、理解を深めていくことが大事です。

平栗 潤一

この記事の監修

平栗 潤一

一般社団法人 日本介護協会 理事長

大手介護専門学校にて教職員として12年勤務し、約2000名の人材育成に関わる。その後、その経験を活かし、認知症グループホームや訪問介護、サービス付き高齢者向け住宅などの介護事業や、就労継続支援B型事業所や相談支援事業所などの障がい福祉事業を運営。また一般社団法人日本介護協会の理事長に就任し、介護業界の発展を目指して活動中。

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